マイホームの維持に欠かせない屋根と外壁。今回はその外壁の話をしていきます。
一言で外壁といっても実に種類は豊富で、多岐にわたります。概ね外壁材の上に塗装を塗布し、大切なマイホームを雨や嵐、時には寒さからも家を守るものです。
外壁材は、ざっくり大きく分類しても、窯業系サイディング、モルタル外壁、金属系サイディング、ALC外壁などに分けられます。
その素材によって用途や特徴がそれぞれにあるので、知っておくことで今後のリフォームにも役に立つでしょう。
窯業系サイディング
窯業系サイディングとは板状の外壁材で、内容分の80パーセントがセメント、残りの20パーセントが繊維質の増量剤で構成されているものです。現在、国内シェアの約80パーセントを占めているといわれています。
窯業系サイディングの最も大きなメリットとして、バリエーションの多さと、コストパフォーマンスの良さが挙げられます。外壁材1つで家の印象はガラッと変わるものです。落ち着いた感じにしたい、かわいくしたい、個性的なものにしたいなど、人によって理想は異なりますが、そういったニーズに応えるためのバリエーションの豊富さが、まさに窯業系のサイディングの最大の魅力となります。
価格に関しては、性能を高めた高価なものから比較的安価なものまであり、他の外壁材と比べても概ね安価で、工期も短いので施工費も安く抑えられます。なおかつ選択肢の幅が広いこともあって、多くの方からの支持を受けています。
注意点は、窯業系のサイディングの多くは吸水性が高いということ。窯業系サイディング自体には防水性がなく、表面を塗装することにおいて防水機能を持たせています。しかし、時間の経過とともに表面の塗装が劣化していきます。雨水などがボード内に侵入してしまうと、温度の変化で膨張や変形してしまい、さらに気温が下がり凍ってしまうと、そこからひび割れを起こしてしまします。
また、ボードとボードをつなぐシーリングと呼ばれるゴムのようなものも、劣化が進むと同じくそこから浸水し、変型や反り、ひび割れといった現象を引き起こしてしまう可能性があります。
モルタル外壁
モルタル外壁とは、ラス網(網状の金物)などの上に、モルタル(水・細骨材・セメント)を調合したものを左官仕上げで塗って作る壁に、上から塗装で仕上げるものです。
サイディングが普及するまでは、日本における木造住宅の大多数がこのモルタル塗装でした。
モルタル塗装の最大の特徴は、デザインを作り出すことができるといった点でしょう。サイディングのように製品を取り付けるのではなく、現場仕上げとなるため、それが可能となるのです。
波模様をつけたり、型をくりぬいたり、タイルを張り付けたり、文字を書いたり。外壁そのものをデザインすることはモルタルにしかできないことです。
サイディングは工場製品であり、その中から選ぶといった作業になるのに対して、モルタルは作るといった作業になります。また、サイディングボードのようなつなぎ目がないので、シーリングの劣化の懸念もありません。デザイン性にすぐれた唯一無二の外壁といっても過言ではないでしょう。
もちろんモルタル塗装にも注意点はあります。
窯業系サイディング同様に防水機能がないため、上から塗装を施して防水効果を待たせる必要があります。
また、モルタルはその性質上、必ずといっていいほどひび割れを起こします。モルタルは乾燥収縮を起こすため、ひび割れをおこしてしまうのです。
小さなひび割れなら心配はいりませんが、大きなものになると当然ながらメンテナンスは必要となってきます。
建材の中には、グラウド材というものもあり、いわゆる収縮を起こさないモルタルで、強度も高く、防水性にも優れていますが、コストが高いため壁に使われることはあまりありません。
金属系サイディング
金属サイディングとは、ボードの表面はスチール板などを施していて、裏面には断熱材が入っているサイディングのことです。
近年、金属系サイディングはサイディング材の中でも、最もシェアを伸ばしていているものです。一方窯業系のサイディングはこれまで幅広く伸ばしてきたものの、ここのところは頭打ちといった印象を受けます。
金属サイディングは、ステンレスのような丈夫さとアルミのような腐食しにくい性質を兼ね備えたもので、値段も安価なものからあるサイディングボードです。
金属系サイディングは、主にはガルバリウム鋼板製品が多く、メーカーでの加工品で仕上げることが一般的です。
金属は直接太陽があたれば熱されて、外気が下がると急激に冷やされるイメージですが、他の外壁材と比べると、断熱材一体型の金属系サイディングは断熱効果に優れているのです。
そのため、他のサイディングやALC外壁に比べると5倍から6倍もの断熱効果があるとされています。
耐凍害性についても申し分なく、その他のサイディングでは劣化により湿気や水分が入り込み、それが凍結して融解を繰り返してしまうことによって、結果として外壁材を劣化させてしまうことにつながるのですが、金属系サイディングに使用されている硬質プラスチックフォームは水分の吸収が少ないため、凍害を防ぐことにつながります。
金属系サイディングの注意点は、主として「金属であるがため」というものです。金属板自体は天候や季節により温度変化は激しくなり、変形してしまうこともあり、衝撃にも弱く、何か物が当たると簡単にへこんでしまいます。また、海岸沿いなどでは塩害により錆びてしまうこともあります。
ALC外壁
ALC外壁とは、Autoclaved Light weight aerated Concreteの頭文字で、日本語では「軽量気泡コンクリート」といわれています。耐火性、耐震性、断熱性、遮音性など、建物におけるさまざまな性能を高い水準で満たしている外壁材です。
その中でも一番の強みは耐火性です。
ALC外壁は内部に気泡が空気の層を作るため、熱伝導率が低く遮熱性が高くなっています。
通常のコンクリートの10倍もあるといわれていて、遮熱と併用すると夏は涼しく、冬は暖かいことから、住宅環境を維持しやすくなります。
また、無機質な原料で作られているため、万が一火災が発生したとしても、有害物質を発生させないといった利点もあります。
ALC外壁は耐久性が高く、地震にも強いといわれています。ALC外壁を適切な条件で使用して、定期的なメンテナンスを行っていると、ALCパネル自体の耐用年数は50年を超えるといわれているほどです。
弱点を挙げるとすれば、ALC外壁はモルタル外壁とは違い、つなぎ目があるということです。建物に取り付ける外壁材のため、どうしてもパネル同士のつなぎ目はできてしまうのです。
同じようなつなぎ目ができてしまうものとしてサイディング材がありますが、ALCパネルの方が部材としては小さく作られていますので、その分どうしてもつなぎ目は多くなります。そのため、つなぎ目の劣化と共に雨漏りや入水による部材の劣化を起こすリスクも高くなります。
ALCパネルは吸水性が高いため、対候性が低いといった特徴があります。内部の気泡に水が浸透してしまうと、気温の変化による膨張やひび割れの原因となって、修復が難しくなるケースもあります。ALCパネル自体の防水性がないため、やはりこちらも塗装を施し、つなぎ目にシーリング施工をしなければなりません。結果的には他の外壁材よりコストはかかってしまいます。
まとめ
家の塗装の色1つでイメージも変わります、もちろん外壁材の選定でも変わってきますが、一番いいものというよりは、やはり何を重視しているかといったことになるのではないでしょうか。
かわいい、おしゃれ、安価なら窯業系サイディング。自由度が高い、高級感、唯一無二ならモルタル外壁。遮熱性、おしゃれ、安価なら金属系サイディング。耐火性、耐震性ならALC外壁といったところでしょうか。